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dimanche 14 mai 2006

江島さんと平野さんの公刊書簡より

 江島健太郎さんのブログのコメント欄に、作家の平野啓一郎さんがコメントを投稿しています。その中で、匿名論に関する部分を引用すると、

だからこそ、僕は今、ブログの匿名性を、一種の「自己嫌悪的な」執拗さで批判しているんです。そうして自分を、社会的な自己と、ネット上の自己とに分けて、しかも、後者をこそ、誰にも気兼ねなく、今日会った人の陰口だのなんだのを好きなように言える「本当の自分」だと考えるような生き方は、結果、日常の社会生活をますます希薄化させてゆき、他者からの理解を遠ざけてしまうんだと。

ということです。

 これに対して江島さんは、次のエントリーで、

ただ、いつも気になってたんだけど、そこで「匿名性」そのものをダイレクトに槍玉に挙げるのはアプローチとしては得策ではないというか、少なくともミスリーディングだと思うよ。その反発エネルギーが社会に対して向かうのではなくて、平野に対して跳ね返ってきがちだから。なぜなら、匿名性ってのは常に弱者のためのものだから。それを、地位も名声も知性もある強い立場の人間から、「お前は卑怯だ、堂々と出てきて勝負しろ!」と表舞台に引きずり出そうとされてしまえば、そりゃフェアじゃないって思うのは自然なことやんか。そこは強い立場の人間の方が身を削って百歩譲ってあげるべきところなんちゃう?

という反論をしています。なんとも既視感のあるやりとりです。

 平野さんの学生時代からの友人である江島さんが平野さんのことを慮って行った忠告としてはそれはそれで意味があるのでしょうが、平野さんが問題視しているは、自分を含めた「強い立場の人間」との関係での問題ではなく、「自分を、社会的な自己と、ネット上の自己とに分けて、しかも、後者をこそ、誰にも気兼ねなく、今日会った人の陰口だのなんだのを好きなように言える『本当の自分』だと考えるような生き方」それ自体の問題ですから、「強い立場の人間の方が身を削って百歩譲ってあげ」たところで、どうにかなる問題であるとは思えないわけで、「結果、日常の社会生活をますます希薄化させてゆき、他者からの理解を遠ざけてしまう」ことをどうすることもできないのではないかと思ってしまいます。

 もちろん、ブログであれ何であれ、外に向かって語ることの意義をどこに置くのかということの位置づけとも関係してくるのでしょうが、「意識の有無に拘わらず、『普通の人』として社会的な人間関係に自分を結びつけるために、その多くの部分を日常のコミュニケイションから削ぎ落としていた」部分を自分に関するものとして知ってもらうということを回避してしまうと、社会生活におけるコミュニケイションを豊かにし、「自分という一個の人間の複雑な組成、『複数性』」をきちんと理解してもらう機会を失ってしまうわけで、コミュニケイションにどんなに時間とエネルギーを消費しても、自分が他者からよりきちんと理解されることに繋がらないという、むしろプライベイトなコミュニケイションとしては本末転倒というか結構不毛な状態を生み出してしまうわけです。実際、匿名の陰に隠れて「上から目線」で粘着したりコメントスクラムしたり「ヲチスレ」を構成したりということは、仮想的有能感を満たすことには繋がっても、それ以上のポジティブな意味をその人にもたらすということはないわけで、いま「弱い立場」にいる人々が少しでもより「強い立場」にシフトするには少しでも自分を理解し肯定的に受け入れる他者を増やすことが必要であるとするならば、それらの行為は「弱い立場」の人々を「弱い立場」にとどめておくことに貢献しかねないとも言える可能性すらあります。

(つづく)

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Voici les sites qui parlent de 江島さんと平野さんの公刊書簡より :

» 匿名性は(いわゆる)弱者だけの特権ではない de 江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
あまりに私信の内容が楽しすぎて際限なく続いてしまいそうなので(笑)、今回で私信+αモードはおしまいにして、あとはメールへ移行することにします。 平野からの再返信コメントは読みどころ満載なので、現世に「生きにくさ」を感じているみなさま、是非どうぞじっくりご覧ください。誠... [Lire la suite]

» 匿名性は(いわゆる)弱者だけの特権ではない de 江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
あまりに私信の内容が楽しすぎて際限なく続いてしまいそうなので(笑)、今回で私信+αモードはおしまいにして、あとはメールへ移行することにします。 平野からの再返信コメントは読みどころ満載なので、現世に「生きにくさ」を感じているみなさま、是非どうぞじっくりご覧ください。誠... [Lire la suite]

Commentaires

 「弱者のための匿名性」っていったって、自称「弱者」であることしかわからず、「強者」の匿名性も制限されず、結局だれのための匿名性なのかよくわからないですね。
 例えば、「ネット右翼(=弱者)は一部政治家(=強者)による扇動だ」といっても、ウソか本当か確認できないでしょう。

 このエントリも小倉先生の誤解に基づいていると思います。
 先生が当て擦りのコメントを発する検察OB弁護士や大学教授のブログ(「愚か者」発言)が、逆に長続きしてネットで一定の評価を受けているのは、リアルの肩書や評価を、そのままネットに持ち込んだからではありません。
 それは、落合先生にしろモトケン先生にしろ町村先生にしろ、法律問題やネット問題について、素人にわかりやすい言葉と短文を用いていながら、正確で質のある客観性を重視した読み応えあるコメントをしているからです。
 現実社会の世評(あればですが)や人格がそのままネットに持ち込まれて一致しなければおかしい、という考え方こそおかしいです。
 それに、現実社会でどんな著名人であっても、異常な長文で誰に何言っているのか意味不明で回りくどく、それでいてあちこち間違っている上に、当て擦りや嫌味連発のエントリなんかを次々上げられたら、小倉先生だって「読む価値はない」と判断するのではないかと思うのですが。

>自分が他者からよりきちんと理解されることに繋がらないという、むしろプライベイトなコミュニケイションとしては本末転倒というか結構不毛な状態を生み出してしまうわけです。


いいえ、これは違います。
コミュニケーションの新たな形、というか新たなジャンルが期待できます。


有名どころで言うと電車男(笑)

このあたりの突っ込みを江島さんの言葉に合わせると

>ネットはもはや「社会の相似形」ではなくて「社会そのもの」なのだから、個別事象をそれぞれ局所的にみれば、現実社会から陰湿なリンチやら青姦やらホロコーストやらIdentity Theftがなくならないのと同じ程度には陰の部分があって当たり前で、ネットがどうとかいう以前に、この住みにくい世界とどう向き合って日々をかろうじて生き延びていきますかという、物心ついた小学生の頃ぐらいからみんながずっと直面しているはずの苦悩と地続きというかそのまんま同じ問題系~


なのかな。
バカも鋏も使いようとでも突っ込むべきなのか?

というかなんだろうな。
平野さんが
>江島が「ネットは社会」だというのは、よく分かるけど、でも、厳密に言えば「近似だ」くらいでしょう?

みたいなことを、あるいは【社会の鏡像】みたいなことを言って、江島氏も含めて「社会」とネットワークに線引いてるのが違う気がするな。

むしろ、会社という社会があって、学校という社会があって、家庭という社会があって、外歩いているときという社会があって、ネットという社会があって。
そのそれぞれで自分の出し方が違うのはごく当たり前のことなのでは、とね。


ソレはともかく、要するに小倉さんの問題点は

>個人の身辺雑記的な「無益な」ブログに注目しています。
>僕はもっと、梅田さんも言ってたみたいに、mixiとか、自分の周囲の友人知人にはブログの存在をdiscloseしている人たちについては、肯定的に語るべきだったと思います。

という平野さんが理解している部分を度外視している点かな。
小倉さんの言うそのモデルは、今一部しかない「有益な」ブログのことしかカkk長柄地ないんじゃないの?
ということですな。(もちろんその問題点はこのエントリ以外も含めて引き出したものだけれど)

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