匿名と実名という議論をすると、「長年使い続けているハンドル名には既に一定の信頼が付着しているから、名無しさんや捨てハンドルと同様に扱うべきでは ない」という趣旨の反論を受けることがあります。しかし、私は、固定ハンドルもまた匿名の一種として取り扱います。もちろん、固定ハンドルの場合、名無し さんよりは議論の継続性があるわけですが、それでも匿名の利益を十分に享受しているからです。
ここでいう「匿名の利益」とは、自らの発言に伴う責任を回避できるということです。
「長年使い続け」られているものであっても、ハンドル名しかわからない状態では、被害者は卑劣な誹謗中傷者を相手に訴訟を提起することができません。 IPアドレスなどの手がかりを被害者が入手できた場合にはプロバイダ責任制限法第4条に基づく発信者情報開示請求訴訟を提起してその者の実名等を知ること ができる可能性はありますが、その場合でも、本来加害者側に立証責任があるはずの違法性阻却事由について、これが存在しないことの立証責任を開示請求者に 負わせるのが多数説です。すなわち、固定ハンドルで発言すると、違法性阻却事由に関する立証責任を被害者に転換できるだけでも大もうけです。
また、実名で発言をしていると、法的意味での「名誉毀損」や「侮辱」等には当たらなくとも、他人に対しておかしな批判発言を続けたり、連日何通も他人の ブログに嫌がらせっぽいコメントを投稿し続けていれば、実社会での評価まで下がってしまいますので、その種の行動は躊躇されますが、固定ハンドルではその ような心配をすることはありません。「匿名の恥はかき捨て」とばかり連日「いやがらせ」意外に何の価値もないコメントを投稿し続けることができます。
このように、固定ハンドル系の方々も、「自らの発言に伴う責任」をがっちり回避しています。
そして、この匿名でしかコメントできない臆病者が自分に気に入らない発言をする者のブログに粘着する日本のブログ環境は、双方向メディアとしてのブログ の発展を阻害するものであると考えています。実際、高度な内容のコンテンツを生み出せるような人たちが、ブログの現状に失望して、mixi等の閉鎖環境に 移行しつつあるという示唆を何人もの人から受けています(しかし、そのような高い価値を有する言論が、「インターネットという巨大なデータベース」に蓄積 されなくなることを、私は好ましく思っていなかったりします。)。
なお、O'Reilly Networkで「匿名での投稿を許可することは重要か、それとも人間のくず(riff-raff)を呼び込むだけか」というア ンケート調査をしたところ、「人々は匿名の陰に隠れ、しばしば議論の質が低下する」という意見が56.8%だったようです。
> ここでいう「匿名の利益」とは、自らの発言に伴う責任を回避できるということです。
いいえ。
同じ意味合いで、悪影響を実社会まで到達させないところに最大の利益があります。多くの人はだいたいこの用向きで使っているのではないでしょうか(そんな全員が全員揉めてるわけではない。)
この中には批判意見の到達以外にも、嫌がらせの影響の到達なども含有しています。
視点をもっと広く。
以前某共産党議員と論争になったときは、メールにより実名を伝えて、表ではHN使用していました。
これは両方をいいとこ取りですね。実名による信頼性の多少の向上と、匿名による防御策の。
まぁ、頭の使いかた次第ですね。
というか、実名じゃないと発言が疑わしいという感覚がいまいちわからない。むしろ実名であっても盲信しないのがメディアリテラシーだと思っているので。
> 手先さん
>私が本当に山田太郎だとどうやって確認するのでしょう?
でもって、下手に山田太郎だと確認できるほどにトレーサビリティ高めると危険性も増大、と。
↓
>ブログに嫌がらせっぽいコメントを投稿し続けていれば、実社会での評価まで下がってしまいますので
このように正直に書き込んだ人だけ危険(実社会での評価が下がったり)で、偽情報書き込んだ人は安全という偏った状況を生み出しかねないって言うか、事実そうなると小倉先生も言っているわけですな。
Rédigé par : サスケット | vendredi 17 juin 2005 à 01:32
他の方が言ってることの繰り返しに近くなってしまいますが……
たとえば私が「山田太郎」と言う名前だと主張して、それで書き込みを行ったとします。その場合、私が本当に山田太郎だとどうやって確認するのでしょう?
もしくは同姓同名の別人がいた場合、その中で誰が私だと見分けるのでしょうか?
本籍、住所、電話番号、そういったものまで示さねばならないのでしょうか? しかしそれとて書き込んだ本人のものであるという保証はありませんし、そうだとしてもネットに個人情報を晒してしまうことは他人でそれをやった場合は犯罪となりうるほど大変危険な行為です。
実はネット上で晒した実名が本物かどうか、確認することは途方もなく難しすぎて、実質あまり意味がない行為だと思います。
それよりは実はフリーでないアドレス、フリーでないホームページスペースなど、そういったものを晒している方がはるかに当人の自己同一性の証明になるでしょう。
クラックされていない限りは当人に書き込みが当人のものか確認できますし、問題が起こった場合、プロバイダ等に苦情や訴訟の意思を伝えれば、わざわざ問題のあるユーザーをかばう義理はありませんから適切な手続きに従って処置してくれるでしょう。
だというのに、何故小倉先生が実質確認がほとんど不可能な「実名」にこだわり、トレーサビリティのより高い手段をそれより意味がなく「卑怯だ」とされているのか、正直よくわかりません。
ちなみに私の本名は山田太郎ではありませんので、悪しからず。
Rédigé par : 手先 | mercredi 18 mai 2005 à 02:25
Inoue さん
>表示を許可制にできるblogサービス
自力でサーバスペースに設置せねばなりませんが、私の知る限り Movable Type が同等の機能を持っています。
http://www.movabletype.jp/product_overview.shtml
Rédigé par : 凧 | mercredi 18 mai 2005 à 01:59
ひとつ小倉先生に質問なのですが。
著述業でも芸能人でもなく企業にも属していないような人(例えば専業主婦とか)がネット上で発言する場合、実名で発言したときと固定ハンドルで発言したときとで、何か本質的な差異があるのでしょうか。
名乗っている名前が本当に実名なのかは結局のところ本人にしかわかりませんし(運転免許証の画像でもUPすれば別ですが)、平凡な名前の人は同姓同名の人が一杯居たりなんかもするわけですし、犯罪に利用されない範囲内でしか個人情報を公開しないのであれば住所などもあまり詳しくは書かないわけで、実名でも固定ハンドルとさして変わりがあるとは思えません。結局、職業が専業主婦だというだけで違法性阻却事由に関する立証責任を被害者に転換できて大もうけです。
うわー。主婦ズルい。無職も。というか、社会的地位の無い者は実名でも固定ハンドルと実質同じなんだから、ネットではいっさい発言しちゃいかんですよね。
Rédigé par : 黒羽 | mercredi 18 mai 2005 à 01:55
斜め読みで反応。
文章的には一理ある事を書いているように思いますが、
「連日「いやがらせ」意外に何の価値もないコメント」
など相手を意図的に挑発している文が散見され、
まともな議論に発展しないような気がしたので、
思考停止しておきました。
とりあえずその喧嘩腰を何とかしてください。
Rédigé par : 終始 | mercredi 18 mai 2005 à 01:34
ここで問題になっているのは、具体的にはblogにおける開設者とコメント者との非対称性ですよね?匿名コメントがやり放題だと、blog文化の発展にとって有害だから、どこかで歯止めが必要だという話。
ってことは、話は結構簡単で、許可したコメントのみ表示されるようにすればいい。blogの設定をいじれば可能でしょう。
「恣意的な選択」とかいう批判が新聞の投稿欄にありますが、誰でもblogが開設できるんですから、世論誘導にはならないと思います。開設者のスタンスが気に入らないなら、自分でもっと魅力的なblogを作ればいいんです。
で、今、コメントスパムで困ってるんですが、表示を許可制にできるblogサービスがありましたら、お教えください>みなさん
Rédigé par : Inoue | mercredi 18 mai 2005 à 00:51
> 異なるネット企業間で協定を結んで、一元的にIDを管理すれば、追跡可能なIDができあがると思います。
いや、というかIPチェックしとけばいいと思いますよ。
仮にID管理してる企業があっても、(個人の)書き込み先がそのID取得するロジックを組み込まないといけないでしょ?
IP取得するほうが書き込まれるほうも楽ですよ。
もっとも問題はIP、あるいはその「一元的なID」を、誰がどうやって取得するのかではないかと。
小倉せんせーもいってるでしょう?
>ブログに嫌がらせっぽいコメントを投稿し続けていれば、実社会での評価まで下がってしまいますので、
そのIPアドレス(一元化ID)管理会社が、下手に個人に結びつく情報をばら撒いて、嫌がらせされたら実社会の評価が下がってしまいます。何も悪いことしてないのに。
Rédigé par : サスケット | mercredi 18 mai 2005 à 00:46
小倉先生を含め「実名主義者」の方にひとつ質問なのですが・・・
1)「書き込みの個人情報(本人の実名等)の把握が法執行以外に可能」というのは、
「有料国内プロバイダーが、個人情報である契約内容を部外者に流出する」
「その場合に個人情報の保護を一切行わない」
ケース以外にありえるのでしょうか?
2)さらに。それが民主主義国家で可能なのでしょうか?
3)さらに。仮に上記が施行されたとして海外のプロクシー利用他、個人情報と書き込み情報の関連を断ち切る方法を選ぶ場合(いくらでも考えられますし、ほとんどの利用者はそれを選ぶと思いますが)把握を可能にする技術的・法的な方法を、教えてください。
4)それは。もしかして「全国民のネット書き込みをモニタリングする」ということなのでしょうか。それならば可能だと思いますが・・・
Rédigé par : 中井亀之助 | mercredi 18 mai 2005 à 00:23
このエントリのロジックだと、切込隊長はしがない記者に「自らの発言に伴う責任」を負わせたことになるような・・
Rédigé par : irose | mercredi 18 mai 2005 à 00:02
>Inoueさん
TypeKeyという認証サービスがあるにはあるんですが、固定ハンドルの同一性を担保しうる程度のものであり、IDから本人(実名など)を同定することはできませんから、小倉さんが仰るような匿名性を回避できるものではないと思います。
Rédigé par : 福田 | mardi 17 mai 2005 à 21:47
>固定ハンドルの場合、名無しさんよりは議論の継続性があるわけですが、それでも匿名の利益を十分に享受しているからです。
小倉さん。
あなたは私の実名を知っているにも関わらず私のコメントを引用した上で「匿名」扱いした。
ネットに実名を晒さない限り匿名の利益を享受しているとでも?
私の実名はおろか住所まで少しの知識さえあれば誰でも数秒でトレースできる。小倉さんがまさかそれを知らないはずはないのですが?
私はそういう意味で実名を晒している自覚があるし、利益など享受していない。そもそもハンドルだろうが実名だろうが私の言動は変わらない。ふざけちゃいけないよ小倉さん。
Rédigé par : J2 | mardi 17 mai 2005 à 17:05
blogによっては、自分の属するサーバのblogにしかコメントやトラックバックを認めないという設定が可能です。exblogなんかそれですが。
異なるネット企業間で協定を結んで、一元的にIDを管理すれば、追跡可能なIDができあがると思います。認証を専門に行うベンチャー企業が出てきてもよい。
Webサービスでは、ユーザがサーバごとにIDとPassの組み合わせを管理する手間が増大していますので、ユーザ側からのフィーも期待できます。
ITベンチャー企業がそれをやってくれないだろうかと待っているのですが、なかなか出ませんねえ。ライブドアは他社の物まねと企業買収をしているだけですし。
Rédigé par : Inoue | mardi 17 mai 2005 à 15:23
月下獨酌様
>だからこそ確固たる意見の有る専門家の見解としての、「ここまで実証されていれば実名として扱っても問題は無い」と言う線引きが聞いてみたいのです。
成る程。確かにどうすれば騙りも含めて匿名性が排除されるのかというテーマには私も関心があります。
それに個人情報保護法との兼ね合いについても専門家に意見をお聞きしたい所ですし。
幸い、「匿名性の排除を願うのは訴訟を盾に言論弾圧を目論む悪魔の手先だ!」みたいな極論はありませんしね。
大いに議論を進めたい所です。
Rédigé par : もみ。 | mardi 17 mai 2005 à 14:23
もみ。様
> でも、ホットワイヤードで書いていたのは小倉先生で
> 間違い無いとしても、このブログを小倉先生が書いて
> いるという証明にはなり得ないですよ。
> だって、「これからここで書きます」と紹介されたこ
> の場所が嘘だったりする可能性もあるし、最初は本当
> でも今は誰かにパスを譲渡したり盗まれたりして、別
> 人が書いている可能性も無い訳じゃ無い。
そうなんですよ。
匿名か実名かと言う二元論にすると白黒はっきりするのですが、実際には殆どがグレーゾーンで疑えばきりが無いのが実情だと思っています。
だからこそ確固たる意見の有る専門家の見解としての、「ここまで実証されていれば実名として扱っても問題は無い」と言う線引きが聞いてみたいのです。
例えそれが仮に専門家の一致した見解に至っていない個人的な見解だとしても、自分と違う意見を聞ける事は後学の為になる事ですので。
ただ今後何らかの方法でネットの匿名性が排除出きる技術が確立し、誰もが実名あるいは結果として個人特定出切る方法でネット上で議論できるのならそれはある意味素晴らしい事だと思います。
そうなればコメントスクラムに悩む事などなく、オレオレ詐欺などの実世界の匿名性を悪用した犯罪の被害者も減らす事が出来そうです。
Rédigé par : 月下獨酌 | mardi 17 mai 2005 à 13:31
違法行為を行うには匿名である方が都合が良いのでしょう。実名を強制すれば闇討ち的ないやがらせは減るのかもしれませんね。しかし、そうなれば私は書き込むのをやめて、mixi等の閉鎖環境に移行するかもしれません。
ところで、公平を保つためにも、匿名でしかコメントできない人を「臆病者」というのに対して、わざわざ実名をあげてコメントする人を「目立ちたがりの恥知らず」と呼ばせてもらえないでしょうか。
Rédigé par : 佐藤 | mardi 17 mai 2005 à 13:12
またどうしてそこまで挑発的に物言いをされるか、真意がわかりませんが・・・
一点指摘させていただきます。
O'Reilly Networkの調査の件ですが、アメリカの場合通常パスワードーログインをさせるか(その場合固定ハンドルが自動表示される)、アノニマス(匿名か)の二者択一でありそれを聞いています。つまり、(実名を含む固定ハンドル)V.S.仮名の調査結果です。
先生の上のエントリでのご主張のように、実名V.S.(固定ハンドル+匿名)の調査結果ではありません。その点、勘違いではないでしょうか?
アメリカも日本同様、無料サイトは実名確認はしておりません。その氏名、住所、連絡先の多くは架空だったりしています。ログインをさせているから本人確認がより容易になる、ということもありません。(本人が正直に実名で入れている場合はもちろん別ですが、一方そういう人が抽象誹謗を行うでしょうか?)
ログインネームによる固定ハンドルは、このサイトのような「書き込みによる固定ハンドル」と違い、もうちょっと一貫性や信憑性は高いと思います。
一方アノニマスで書き込む人は、単にパスワードを覚えていないとか、あるいは、そのサイトに初めて訪れた人、めったに訪問しない人が多いと思います。
そういう人たちはそのサイトに長くいて、ある程度自分の発言の一貫性を保ちたいという人に比べて、発言のレベルが低かったり(大体短文になりがち)また感情的だったりするケースが多いようです。
2チャンネルなどの発言を見ても、日本でも同じことはいえると思います。
Rédigé par : 中井亀之助 | mardi 17 mai 2005 à 12:06
素朴な疑問なのですが。
まず先に、私がこの「月下獨酌」と言う固定ハンドルを使用しているのは、名は体を表すの言葉通り私をよく表現している名だからです。
指摘されている「匿名性を持つ」と言う事実は否定はしませんが、私の場合目的は異なります。(匿名性が目的なら、これも指摘の通りですが名無しで発言します。)
本題ですが、私達の様に一般個人が「匿名性」を排除するのに必要なデータはどの程度必要だと思われますか?
本名・電話番号・住所等を公表したとして、それが当人の物であることが確認できない限り個人の匿名性を否定するには不十分だと考えています。
小倉弁護士の場合を考えてみれば、我々がこのブログを運営されているのがご本人であると確信している大きな理由の一つにホットワイヤードとの繋がりが有ります。
ホットワイヤードで連載を持ち、そこのエントリーからリンクされているからこそ小倉弁護士ご本人が運営していると判断できます。(少なくとも私はそうです。)
一般に「匿名性」を持つ書込みを否定する意見があるのは承知していますが、ではどの様にすれば自らの発言に責任を持つ「実名」相当の立場になれるのでしょう?
一個人がホットワイヤード等の有る程度信頼できると思われる情報源から一種の認定を受けるのは事実上不可能です。
CAを利用する方法もありますが、少なくともこのブログのコメント欄で証明書を利用する事も出来ません。
私もネットを利用する人間として、匿名の発言はマナーに反すると言う事になればそれに従い発言を止めるでしょう。あるいはネットその物を止めてもいい気もします。
実名を証明する方法は無い、匿名は駄目となれば......困った事です。
Rédigé par : 月下獨酌 | mardi 17 mai 2005 à 10:23
そのアンケート、そもそも記事の原文では「anonymously」となっているので、匿名性というより無名性、2chでの「名無しさん」みたいな状態を想定してるんじゃないでしょうか?
Handleの是非についての調査結果は存在していないのでしょうか?
Rédigé par : 手先 | mardi 17 mai 2005 à 09:44
>なお、O'Reilly Networkで「匿名での投稿を許可することは重要か、それとも人間のくず(riff-raff)を呼び込むだけか」というアンケート調査をしたところ、「人々は匿名の陰に隠れ、しばしば議論の質が低下する」という意見が56.8%だったようです。
これアメリカでの調査ですよね。日本での調査結果って無いですか?
Rédigé par : 実名 | mardi 17 mai 2005 à 09:25