小泉総理の靖国神社への参拝については、一般に「左派」とカウントされる朝日新聞だけではなく、「ウヨサヨ」的話題にさほど関心がない日経新聞などが批判的であるというところが面白いですね。日中関係、日韓関係の悪化により大陸ビジネスの邪魔をされることに不快感を有している方々が日経新聞の主たる読者層には多いであろうことは想像に難くはないのでそれはそれでよく分かる話です。
ところで、靖国問題の解決策として与党の一部によって模索され、与党の一部の反対により挫折気味な構想として、無宗教の「国立の戦没者追悼施設」構想というものがあります。これに対しては、「国立追悼施設に反対する宗教者ネットワーク」等のような方向から批判的でいるというのは理解できるのですが、日本会議的な方向からの批判というのは理解しがたいといえます。まあ、一部の宗教団体がこのような主張をするのは構いませんが、このような批判に乗っかって「国立の戦没者追悼施設」構想に反対する国会議員さんがいるとしたら、そのセンスを疑ってしまいます。
リンク先の(2)〜(3)のように(リンク先はまる数字ですが、それは機種依存してしまうので、かっこ数字で代替します。以下同じ。)靖国信仰に依拠した理由というのは、靖国信仰を持たない人々に全く意味を持ちませんし、(4)は「靖国神社を特別扱いせよ」といっているのとほぼ同義ですから、緩やかな目的効果基準で政教分離を処理している我が国においてもさすがに無茶な主張ではないかと思われます。
(5)(6)については、そもそも追悼すべき範囲を国が一義的に定める必要があるのか(それ以前に、そんなことが許されるのか)ということを考えるべきなのではないかという気がします。
(7)についていえば、「不戦」は少なくとも現在の日本国憲法下では国是の一つであって、不戦を誓うことがけしからんから「国立の戦没者追悼施設」には反対するという議員さんがいたら、少しは憲法尊重擁護義務を果たしてもらいたいといわざるを得ません。
(8)についていえば、既に武道館や千鳥ヶ淵や広島、長崎では既に無宗教の追悼式典が行われているのだから、何を今更といわざるを得ません。
(9)についていえば、他国からの要求が受け入れ可能なものであれば受け入れを検討するのは別に珍しいことではないし、受け入れた方がよさそうであれば受け入れることを躊躇する必要などありません(内政干渉許すまじ派の方々は、日米構造協議等で米国から要求された事項は、「それを受け入れると内政干渉に屈することになる」との理由だけで反対しているのでしょうか?)。
(10)についていえば、それで日中間、日韓間の経済交流の妨げが一つ除去できるのであれば、よほど豪勢なものを建設しない限り、ペイするのではないかと思います(どの程度のものを建設するかはこれからの話ですから、何とも言い難いですが。)。
これに対し、国家レベルでの戦没者の追悼式典を靖国神社に外注するというスキームもあるようですが、このスキームの最大の問題は、「誰と誰をどのように追悼するのか」という式典の中核部分を一宗教団体が恣意的に決定することができ、これに対する民主的な統制が及ばないという点ですね。もちろん、民主的な統制が及ぶようにするという方法もあるのでしょうが、そうすると、宗教団体としての靖国神社は全く形を変えざるを得ない(A級戦犯を追悼の対象としないことを明らかにした、無宗教ないし汎宗教的な式典にせざるを得ないでしょうね。国家的な式典を行う施設には就遊館的なものは置くわけに行かないでしょうし。)わけで、それはそれで靖国信仰の信者たちにとっては楽しくないのではないかとも思うのですが、どうなのでしょうね。
【今日聴いた曲の中でお勧めの一曲】
"Like toy soldiers"
by Eminem