Wiredの元編集長であるKEVIN KELLY氏がそのエッセイの中で、
However in every system that I have seen where anonymity becomes common, the system fails.
と述べたことに対し、Wiredのセキュリティ問題のコメンテーターであるBruce Schneier氏が、;Wired Newsの記事の中で、
The problem isn't anonymity; it's accountability. If someone isn't accountable, then knowing his name doesn't help.
と反論したことが最近注目されています。
Schneier氏は「Historically, accountability has been tied to identity, but there's no reason why it has to be so.」なんて簡単に言ってしまうのですが、匿名性が高度に保障され、現実空間において、その言動について法的または社会的な責任を負わなくとも済むといったときに、accountabilityを果たすことをどのように義務づけることができるのかというと、そこはかなり疑問です。
なるほど、eBayの場合、anonymous nicknameを過去の取引実績と結びつけることで、「誰かが不正行為を働けば、すべてのユーザーが知ることになる」システムを構築できるかも知れません。しかし、anonymous nicknameとその使用者の現実空間での氏名及び住所等の「身元」がリンクしないのであれば、その不正行為による被害者は法的な救済を受ける術を失います。また、anonymous nicknameとその使用者の現実空間での氏名及び住所等の「身元」がリンクしないのであれば、同一人物が次々と新しい「anonymous nickname」を取得することができますから、あるanonymous nicknameで不正行為を働いたことがみなに知れ渡ったら、別のanonymous nicknameを用いればよいだけのことです。
それでもeBayのようなnet auctionの場合は、嘘を嘘と見抜かないと、信じた人が損をするシステムだから、まだましかも知れません。そのようなシステムにおいては、読み手が書き手に対してaccountabilityを求める動機があり、したがって書き手にaccountabilityを果たすことを義務づけないシステムは、これを義務づけるシステムが現れたときに、市場原理により淘汰される可能性があります。
しかし、wikiやblogやBBSのような場合は、テーマにもよりますが、嘘を嘘と見抜けなくとも読み手は通常直接的には損をしません。他人のうわさ話を費消する人々は、一般に、そのうわさ話の真否などどちらでもよいのです。損をするのは、根も葉もないうわさ話を書き立てられた人々です。したがって、anonymous nicknameを過去の発言実績と結びつけることで、「誰かが不正行為を働けば、すべてのユーザーが知ることになる」システムを構築しても、さほど意味はありません(これは、いわゆる「黒木ルール」の問題点でもあります。)。
さらに、特定の人を言論の場から排除するために執拗に嫌がらせを繰り返す、いわゆる「粘着君」についていえば、自分の発言の内容が読み手に信じてもらえるかどうかということはどうでも良いことなので、accountability等ということは問題となりようがありません。彼らにとって、自分が信用されるということは基本的に重要ではないからです。そういう彼らにaccauntabilityを果たさせるシステムなど果たしてあり得るのでしょうか?
このように考えると、「However in every system that I have seen where anonymity becomes common, the system fails.」というKelly氏の意見に対する「The problem isn't anonymity; it's accountability.」というSchneier氏の反論はあたっていないと言えるのではないかと思います。
【今日聴いた曲の中でお勧めの1曲】
How?
by John Lennon
基本的に、犯罪行為・損害賠償に及ぶのであれば開示請求訴訟その他の手段をとるので別枠として。
#>その不正行為による被害者は法的な救済を受ける術を失います。
#要するにおまわりさんが実名取得できたとしても通常の手段で実名が取得できないなら匿名として使用できると言うこと。
ちと、使用法が間違ってます。
>損をするのは、根も葉もないうわさ話を書き立てられた人々です。したがって、anonymous nicknameを過去の発言実績と結びつけることで、「誰かが不正行為を働けば、すべてのユーザーが知ることになる」システムを構築しても、さほど意味はありません(これは、いわゆる「黒木ルール」の問題点でもあります。)。
信じることの出来ない変な発言を繰り返すアカウントを信用しないという使用法。
eBay の場合での有効性と同じですよ。
妄言を繰り返すニックネームは信頼されない。信頼しない。
使いようによっては有効な手段ですよ。
そのアカウントでログインした発言については閲覧対象外とするとかですね。
anonymous nickname を改めて取得する場合、彼らはそれまでのバックボーンやら積み重ねやらがが消失する。
こう言ったことにより、自称オグラヒデオ文字列より、自称オグラヒデオのハテナログインのほうが有効になるわけです。
最も求めているレベルが違うのならハテナIDが意味がないという発言は和歌らんでもないのですが、少なくとも「未ログイン>ログイン」みたいなの考えは確実に間違っていると言えるでしょう。
対策と言うのは効果やら、リスクやら、状況、必要とされるレベルによって変えねばなりません。
あるところでは、高木さんが言ったような実名に結びつく顕名システムが必要とされるでしょうし、
もうちょっとその規模が落ちてもいいところであれば、その規模・信頼性を縮小しても事足りるわけです。
2chのような場所なら、トリップ程度で有効なように。(あれは簡単に乗り換えできる実名に全く繋がらない、個人を特定したいと言う人間には『使えねー』手段に見えるだろうが、神の偽者が現れにくくできるという"積み重ねを保障する"というポイントにおいて有効。)
SPAM対策と匿名の卑怯者対策を間違われてたときにも言いましたけど、対策と言うのは場合によって変わるわけで。
ニックネームが全てのパターンで使えないかというとそうとは限らないですよ。
とはいえ、匿名を有効にしたうえで、妥当な悪い奴とっ捕まえますヨ能力のために、ログの保存だとか、あるいはその運用だとかにもう少しわかりやすいガイドラインでもあればよいのですがー。
Rédigé par : サスケット | samedi 21 janvier 2006 à 19:16
あと、2ちゃんねるは、匿名が一般なのに、failしていませんから、Kelly氏の意見はどうかなぁと思います。
勿論私は先生の問題意識自体を否定するつもりは毛頭ございません。
satosatosatosato60@yahoo.co.jp
Rédigé par : 佐藤 | samedi 21 janvier 2006 à 14:25
有意義な問題提起だと思います。
ただ・・
>このように考えると、「However in every system that I have seen where anonymity becomes common, the system fails.」というKelly氏の意見に対する「The problem isn't anonymity; it's accountability.」というSchneier氏の反論はあたっていないと言えるのではないかと思います。
少なくともeBayのようなnet auctionの場合にはあたっていますし、MLやSNSにおいてもそうではないかと思います。
もちろん「wikiやblogやBBS」ではそうかもしれませんが。
私は「in every system」という点でKelly氏の意見は正しくないと思います。
satosatosatosato60@yahoo.co.jp
Rédigé par : 佐藤 | samedi 21 janvier 2006 à 14:16