皇室典範改正問題が相変わらず懸命に論じられていますが、女系天皇反対論の中身を知れば知るほど多くの国民は「引いていってしまう」のではないかというのが正直な感想です。
普通に考えれば、「男系かつ直系」承継が皇太子or秋篠宮までで途絶えてしまうため、「世襲」を維持するためには、「女系」or「遠くの傍系」のどちらかを選択しなければならないという現実を前にしたときに、小泉首相は「女系」の方を選択したというだけのことです。それは、「世襲」という言葉について一般国民が持つイメージにも合致するわけで、実際、各種の世論調査によっても大半の国民の支持を得られています。国民の世論を気にする小泉首相が「女系」を選択するのは私には非常に自然に見えます(時期的には、秋篠宮の長女があと5〜10年でいわゆる結婚適齢期に入りますから、「女系」承継をも可とする方針に切り替えるのであれば、そろそろ準備が必要ですし、皇室絡みを政争の具にしないためには大規模な国政選挙が当面ない今国会に法案を提出するのはむしろまっとうな判断だといえます。)。
それだけのことなのに、中国やら韓国やら創価学会やら共産主義者やらの陰謀論を持ち出されたって、中国やら韓国やら創価学会やら共産主義者やらのことで日々頭の中がいっぱいな「一部の人」以外は「はあ?」と思うしかないのではないかと思います。
皇太子に側室を持たせるなんてことをいっている人もいるようですが、そういう提案をする政党は次の選挙で女性票を失って大敗するのではないかとも思うし、それ以前に、皇室典範を改正して皇室に限り側室を持てるようにしたところで、皇太子は側室なんて持とうとしないように思うのですが、側室制導入論者は皇太子の意思を無視して無理矢理にでも側室を押しつける気なんだろうかと思ってしまいます。それ以前に、いまどき側室になどなろうという女性もそうそういないのではないかという気もします(誰でも良ければいるかも知れませんが。)。
また、愛子内親王を旧宮家の男の子と結婚させればいいなんて軽々しく論ずる人々もいるようですけど、「好きでもない男と結婚して子供を作ることを国家が強要する」というのは、想像するだに、あまりにグロテスクです。
なお、男系継承を維持していれば「王朝の交替」はないのかというと、フランス史において、シャルル4世→フィリップ6世、アンリ3世→アンリ4世という継承については一般に「旧王朝の断絶&新王朝の創設」という扱いを受けているわけで、そういう観点からすると、旧宮家の復活&旧宮家の男子への皇位の継承だと、天皇を一種の「王」と捉えた場合には、「王朝の交替」という扱いを受けることに却ってなるのではないかという気がしなくはありません(逆に、「男女を問わず長子承継」が欧州系の王家で一般化したので、「女系承継=王朝交替」という扱いを受けない可能性もかなり高いのではないかと思います。)。
男系堅持派からは「30時間程度の議論で簡単に変更してしまってよいのか」という意見が出ていますが(例えば三笠宮寛仁親王など)、実は男系と女系とを巡る議論は明治初期の帝国憲法制定以前から行われており、明治13年に元老院が立案した「日本国憲按」や、明治18年に宮内省制度取調局が立案した「皇室制規」では女系を容認する内容となっていたりしますから(結果的に伊藤博文らの反対によって不採択となりますが)、何も今に始まった議論などではなく、100年以上前から積み重ねられてきた議論であると言えるでしょう。
(参考)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/dai2/2siryou3.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/dai2/2siryou3-1.pdf
Rédigé par : 福田 | lundi 06 février 2006 à 17:44