第9回 規制見直し基準WG議事概要(法務省ヒアリング)によれば、「司法改革を研究対象にしている」と自称する福井秀夫政策研究大学院教授は、法科大学院の総定員数約5500人のうち約5000人程度が法科大学院を卒業できることを想定されているようです。2〜3年の間に約9%しか脱落しないということは、欧米型の(入るのが易しいかどうかはともかく)「出るのは難しい」教育機関たることを予定していないということなのだと思います。そしてそれは、「点から線へ」というときの「線」の部分は、「大学卒業も数年間働きもせず却って安くない授業料を支払い続けられる」という社会階層面からのスクリーニングと、「法科大学院の教員のやることに数年間黙って従っていられる」とい忍耐力という点に反映されるだけであって、継続的な観察により能力面、資質面で劣るものをスクリーニングするという意味で「線」が活用されることはそもそも想定していないということを意味しているように思います。
福井先生は法曹の「質」に対する要求水準が非常に低い(弁護士であれば懲戒を受けるような人でなければ構わないようです)ので大学卒業後も子供を働かせずあまつさえ高額の授業料をぽんと出してくれるような親御さんをお持ちの方に法曹資格を与えないのはおかしいということになるのでしょうから、法科大学院内での成績が良くないというだけで法科大学院を卒業させないという自体は想定していないのではないかとも思います。ただ、そこまで要求水準が低いのであれば、司法試験制度を廃止して誰でも弁護士になれるようにしてしまった方が合理的だとは思うのですが、その辺は論旨が一貫していないように思います。
いずれにせよ、福井先生が想定されている司法改革のもとでは、法律に対する十分な理解及び知識というのは法曹の要件ではなくなりますから、法律に対する十分な理解及び知識を有する者に法律事務を委任したいと考えている需要者は、法曹資格の有無ということではなく、独自のルートを辿って「法律に対する十分な理解及び知識を有する者」を探さなければいけないということになりそうです。大企業等の大口需要者であれば独自に試験を課すこともできそうですが、一般の市民の方はそういうわけにもいかないでしょう。そうするとそういう方が安心して法律事務を委任できる蓋然性を高めるためには、相当程度「法律に対する十分な理解及び知識を有する」高い蓋然性がある「旧司法試験制度で法曹資格を取った弁護士」に法律事務を委任するのが合理的だということになりそうです。
さすがは定期借家制度の推進者だけあって、弁護士間の競争を高めるような制度を作るように見せて、既存の弁護士を安泰させる制度にしようとしているように思えてきます。
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