プロバイダ責任制限法第4条第4項は、
4 開示関係役務提供者は、第一項の規定による開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。という文言になっているのですが、ここでいう「故意又は重大な過失」の対象って、「開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害」ですよね(通常の読み方だと「開示義務があること」ではないですね。)。
すると、開示関係役務提供者が開示の請求に応じなければ、開示請求者の訴訟を受ける権利が侵害されること、それ故、当該発信者への訴訟が提起できたとした場合の期待値分の損害が開示請求者に生ずることを開示関係役務提供者は知り又は容易に知ることができたということができそうな気もします。もしそうならば、実はプロバイダ責任制限法第4条第4項による免責の範囲というのはかなり狭くなりそうにも思えてきます。
結局、ネットの軽微な誹謗抽象でも判決にいくまでには、弁護士費用や裁判費用それに休業損害などを積算したら、1回当たり50万円は経費として支出しないといけないみたいですね。
それが立替で済むとしても一般サラリーマンには「悪口1つで50万円とりあえずなんてそんなぁ!」というのが体感金銭感覚でしょう。
しかもその50万円が確実に返ってくるとは保証されていないし、相手が無産者や無資力のニートやクラッカーだったら、丸損です。
もし、私の家庭で主人がそのような支出請求をしてきても、当家財務大臣の私(笑)は「家庭経済での支出比率は夫婦共働き月収1か月分程度と高額であり、投資リスクが高く、リターンは悪口1回分の制裁満足感足らずで費用対効果が悪いし、甘く査定しても回収の見込みが高いとの保証があるとはいえない。請求却下!」となると思います。
「そんな悪口1回の報復ために大金投じないでよね。今年は貴方に似た出来の悪い娘が受験で家庭教師代や予備校代(夏季・冬季講習)で、家計は大変なんだから、もー。」という愚痴になりそうです(笑)。
Rédigé par : 憑依 | vendredi 28 avril 2006 à 11:25
DHC事件は企業のブランドイメージや商品の信用性という存亡がかかった事件ですから、損害賠償額という目先の銭金の問題じゃないので、豊富な企業資金を潤沢に投じても企業としてはやる価値はあったし営業戦略上やる必要性が高かったと思います。また、その内容がほとんど執拗な営業妨害に等しく、個人ブログでの誹謗抽象罵倒程度とは異なります。
しかし、個人が誹謗抽象罵倒が誤りであると裁判所のお墨付きをもらえても、そのためだけのために経費数十万(給料数ヶ月分)を投じれる豊かな家庭は少ないでしょう。月収が百万円以上で毎月の小遣いが数十万というセレブでリッチな生活ができる方は別として。
謝罪公告だって相手が無資力ならば代替執行したって、その経費の持ち出しが追加されるだけで大損ですし、こちらとしては相手が心底又は表面上謝罪したものですらない謝罪公告なんて、あまり意味がないような気がします。ここら変は訴訟や判決の意義に執着する小倉さんとは価値観が異なるのですれ違いで終わるでしょう。人生観や世界観の違いかもしれません。
ただ、金がとれなくても判決をもらうことに意味がある、何が何でも訴訟というのは米国流の訴訟社会の病理を思い起こします。もちろん経費や弁護士報酬がロハなら、どんどん訴訟やってもらって構いません。それならアホらしい費用倒れもないので経済的理由から泣き寝入りする必要がないからです。
Rédigé par : 忙中閑人 | vendredi 28 avril 2006 à 10:32
桁ですか・・
DHC事件で400万。そのレベルの、個人ブログへの誹謗中傷って、そうそうないのでは?
・・と直感的には思うのだけれど具体的なケースが無い。あったとしてもそれは恐らくピンキリ。それこそ数万から数百万まであるんでしょう。
なのでケーススタディとして。
このブログで『名誉毀損?』てエントリありましたよね。
あれを、実際に裁判やったら
・原告としては何円を要求するのが順当で
・何円が「勝ち」といえるラインか
というのがわかれば目安にはなると思うのですが、いかがでしょう。
厳密な計算じゃなくてアタリでいいんで、額面提示していただけますか?
Rédigé par : irose | vendredi 28 avril 2006 à 02:25
訂正します。
>経済論としてはその通り
これは「財布だけ見たらその通り」という方が正しいですね。失礼しました。
Rédigé par : 森 | vendredi 28 avril 2006 à 02:11
被害者がISPに対して開示請求をした。それに対してISPは「侵害されたことが明らか」でないグレーゾーンと判断し、請求には応じなかった。そして開示請求訴訟になり、結果的にISPに対して開示請求に応じるよう判決が出た。例えばこの場合、ISPの判断は「故意」とされるのか微妙な判断になる、ということでしょうか。
bewaadさんの共謀罪についての議論を思い出しますね。 http://bewaad.com/20050714.html#p01
ちなみに裁判費用と賠償額を比べて云々というのは、経済論としてはその通りですけど、法律レベルの話じゃないと思いますね。馬鹿馬鹿しくて裁判するかしないかなんて、当事者が決めることでしょう。
Rédigé par : 森 | vendredi 28 avril 2006 à 01:51
なんか桁が一つずれているように思いますが。
(DHC事件では確か賠償額は400万円でしたね。)
それと、名誉毀損訴訟の場合、「相手はろくな根拠もなしに嘘八百述べている」ということを裁判所に認定してもらう効果も無視できないので、回収の見込みがあるかどうかを問わず訴訟を提起するメリットはあったりします。
Rédigé par : Hideo_Ogura | vendredi 28 avril 2006 à 01:34
私の狭い経験では、たかがネット上の誹謗中傷罵倒嫌味皮肉当て擦りで「名誉毀損(侮辱)」で数十万円の損害賠償を手にしても、弁護士報酬、訴訟費用、弁護士事務所や裁判所に通う交通費&休業損害を差し引いたら、手元にに幾らも残りません。
相手が無資力のニートなら判決なんて絵に書いた餅で終わり、むしろ大損でしょう。
弁護士先生はシッカリ弁護士報酬を手にできるから少額事件を訴訟にもっていけばそりゃ儲かるでしょうけど。
手間隙かけて幾らも損害賠償金が手元に残らないなら、あほらしくて「開示手続」「損害賠償請求裁判」なんてやってられません。
なのに小倉さんはなぜ「泣き寝入りする被害者の救済になる」といえるのですか。「泣き寝入りの被害者を救済すると称して弁護士だけが確実に儲かる」としかいえないのではないですか?
こういうことこそILC(インターネット法律協議会)でキチンと議論してもらいたいですな。泣き寝入りの被害者を本気で救済する気があるなら!
Rédigé par : 忙中閑人 | vendredi 28 avril 2006 à 00:32
その一項さんが、
>一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
>二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
という条件をつけてますから、開示請求訴訟クリアしてきたのに見せませんよ(一)、賠償金払えって裁判で決まったのに教えませんよ(二)、という普通(まっとうな業者なら)は発生しない狭いお話ですよね。ということですね。
#昔は2chとかであったのかな?
ん?そうなると免責の範囲が狭いというのは違うのでは?
開示請求訴訟などの、「明らかにする」というプロセスを省いている場合は一項の条件を満たしたとはいえませんから。
いやまあ、開示請求訴訟クリア済みなのに秘密にされる例っていうのがそんなに多いならおっしゃるとおりかもかと。
Rédigé par : サスケット | vendredi 28 avril 2006 à 00:11
法律のことはよく判りませんが、普通に日本語として解釈するならば、
ここでいう「故意又は重大な過失」は「第一項の規定による開示の請求に応じないこと」にかかっていると思われますがいかがでしょうか?もし「開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害」の全体を対象としているという解釈なら「損害」にかかっていると主張しているようにも読めますけど、どちらなのでしょうか?
単純な解釈だと、この4項というのは
開示関係役務提供者は、賠償の責めに任じないよ。という主張で他の文は括弧で括ってもいい但し書きではないでしょうか。つまり、『開示関係役務提供者には賠償責任はないけど、わざととか、忘れてましたとか、そんなことしちゃ駄目だよ。』と言いたいだけなのではないでしょうか?
私の解釈は間違っているかもしれませんが、もしエントリに書かれているような
>もしそうならば、実はプロバイダ責任制限法第4条第4項による免責の範囲というのはかなり狭くなりそうにも思えてきます。
という解釈が正しいとしたら範囲が狭くなってどうなるのでしょうか?以前言っていたプロバイダ責任制限法改正なんて必要なくなりそうですということでしょうか。普通に考えれば狭くなったからって誰も困らないし誰も助からないように思いますが何が言いたいのでしょうか?
それとも単に4項の意味がやっと判りましたという報告でしょうか?
Rédigé par : 平田 | jeudi 27 avril 2006 à 20:47
「請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。」確かに分りづらい言い回しではあります。しかし、私には、法律による副作用も考慮した条文と読めます。確かに、小倉さんが危惧している問題点も内包している条文でしょう。しかし、よぉ~くお考え下さい。小倉さんの、イヤミ、当て擦り、匿名者を敵対視した発言では、世の中は動かない。なぜ世の中を動かすことができないのか、そのことを悟るべきでしょう。残念です
Rédigé par : 弁天小僧 | jeudi 27 avril 2006 à 19:53
>免責の範囲というのはかなり狭くなりそうにも思えてきます。
責任や免責の範囲がそうだとしても訴訟に掛かる費用と得られる損害賠償金はいかほどですか?
費用(本人分の人件費換算のコストを含む)が利潤を上回ったら、だれも馬鹿馬鹿しくて裁判なんかしませんが。
Rédigé par : 憑依 | jeudi 27 avril 2006 à 03:54