名誉毀損発言が海外に拠点を置くレンタルサーバ(ブログサービスや掲示板サービスを含む。)にて行われた場合、サーバレンタル業者に対する損害賠償請求を行うにあたって日本の法律を適用することができるのかという点は、確かに一応問題となり得ます。
幇助者の責任というのは結局のところ(共同)不法行為責任ですから、準拠法については法例第11条第1項によることになります。すると、「原因タル事実ノ発生シタル地」がどこかが問題となるわけです。
東京地判平成16年5月31日判タ1175号頁では、
さらに,名誉毀損を理由とする損害賠償請求の法律関係の性質は,不法行為であり,その準拠法については,法例11条1項によるべきである。上記請求について,法例11条1項にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」は,被告小説の印刷が行われたのが我が国であること,被告小説が日本語で書かれ,我が国において頒布されたことによる我が国における名誉の毀損が問題となっていることに照らし,我が国と解すべきである。よって,同請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。と判示されています。「被告小説の印刷が行われたのが我が国であること」との点を重視すればサーバ所在地法が適用されるのかということにもなるかも知れないですが、それ以外の要素を見ていくと、日本語で書かれ、日本においてダウンロードされ、日本においてダウンロードされたことに依る日本における名誉の毀損が問題となった場合には日本法が適用されるということになりそうです。山本隆司「公衆送信権侵害の準拠法」3~4頁もまた、道垣内教授の見解を引用しつつ、「他人の名誉を毀損する情報が複数の国に流布される場合に、同時に複数の国で損害を生ぜしめた以上、損害発生地ごとに複数の不法行為が成立し、それぞれの国の法がそれぞれの国での不法行為についての準拠法になると考えられる」としています。
すると、私が提唱するプロバイダ責任制限法の改正がなされた場合、利用者の個人情報を直接または共通IDを介して間接的に把握しない海外拠点レンタルサーバにて名誉毀損発言が行われたときは、日本法が適用される結果、当該サーバ事業者は幇助者としての損害賠償責任を負うことになります。
したがって、拠点が海外にあるからというだけでは、名誉毀損発言をしたくてたまらない利用者を集めるためにあえて共通IDを利用しないという営業政策をとるのはリスクが高いということがいえそうです。
> Rédigé par: Hideo_Ogura | le lundi 17 avril 2006 à 08:32
他に言うことはないという解釈でよろしいか?
Rédigé par : irose | lundi 17 avril 2006 à 09:14
訴訟費用がたくさんかかるという文脈で「私の知っている国際訴訟の専門家である渉外弁護士は、タイムチャージが10分間4500円なんだけど……。1時間相談しただけで2万7000円、証人尋問3時間やっただけで約7万円、成功報酬が20%として10~20万円……これに交通費や文書作成料などなどが加算。」という話をして、「それにしても、渉外弁護士さんで10分4500円なんてずいぶん安いところをご存じなのですね(それじゃ、純粋な国内弁護士の標準とあまり変わらないですね。)。」をされたら突然、「そりゃ安いでしょ。大学同期の悪友割引50%(笑)なんですから。」と言い出した時点で、もうメタメタだと思うのですが。まあそのあとの説明にしても、なんと言いますか、素人はごまかせても玄人は誤魔化せないレベルの話をされてもねえ。
le lundi 17 avril 2006 à 04:03になると、どうも設定キャラが以前のものと混ざってしまっているようですし。
Rédigé par : Hideo_Ogura | lundi 17 avril 2006 à 08:32
冗談と言葉の遊びはさておき、FRさんは本気で技術レベルで採算可能な共通IDの実現(ビジネスモデル化)を目指しているわ(匿名プロクシや外国からの投稿を無力化する技術)。
小倉先生もハグラカシや当て擦りなんかしないで、法的面(リーガルイシュー)で共通ID構想を固めて堂々と正面から論陣を張ることを考えてはどうかしら?
大勢のコメンテータの法的疑問に真摯に答えてこそ(技術はスルーでもいいけど)、小倉先生の理想が実現に近付くと思うわ。
私だってネットが誹謗中傷罵倒嫌味皮肉当て擦りの魑魅魍魎が跳梁跋扈する現状はなんとかしたいと思っているのよ(大方のコメンテータも同様じゃないかしら)。
小倉先生には運が悪いことに、誤読王という先生の理論の足を引っ張るお邪魔虫が先生の味方を気取っていること。この人たちが先生の高邁な理想や理論を背後から狙撃したり、足元を乱射したりして先生の理論の信用性を低下させるから、これは幾ら何でもひどいと私も思っているわ。
味方は吟味して選別した方がいいわよ。
本当は私もコスト的にもペイするなら共通ID構想には賛成なのよ。叩かれて叩かれて生き残ったシステムこそ普及することを理解してね。
Rédigé par : 憑依 | lundi 17 avril 2006 à 04:03
>まだ「知人の渉外弁護士」という設定で話を続けるのですか……。
小倉先生におかれましても、まだ「私の周囲では共通ID構想は評判がよい」という設定を続けられてますが……。
Rédigé par : 憑依 | lundi 17 avril 2006 à 02:44
まだ「知人の渉外弁護士」という設定で話を続けるのですか……。
Rédigé par : Hideo_Ogura | lundi 17 avril 2006 à 02:32
> 海外まで強制執行に行くのは大変ですが、日本向けのサービスをしているところは何らかの形で日本国内の個人や法人と債権債務関係を有していたり資産を保有していたりするので、よほどアングラなサービス以外は結構手がかりがあるものです。
そんなのはただの常識に過ぎないから知っています。
知りたいのは、具体的に実際に回収できるかどうか、その可能性は小倉理論で平均的にどれくらいとなるか、それが問題なんです。「手がかり」程度ではビジネスはできませんし、ビジネス社会ではコスト倒れになったら責任を取らされます。それにリーガルイシューに従事する従業員の人件費だってコストに含めて計算するのが会社経営の実務です。
日本支社や営業所又は日本法人から回収に失敗した例が多数あるのはご存じないですか?
Rédigé par : 憑依 | lundi 17 avril 2006 à 01:55
>通説的な見解だと日本にも裁判管轄があるので渉外弁護士に頼む必要はないと思いますが(訴状を送達する際には翻訳をつけますが、一旦裁判が始まってしまえば、日本の裁判では日本語が用いられていることになっているので、こちらから翻訳をつけてあげる必要はありません。で、外国企業を日本で訴えるときは訴状には必要最小限のことしか書きませんから、訴状の翻訳を外部に委託してもそれほど大きな金額にはなりません。)。
小倉先生は外国企業との取引・紛争実務をご存知ないようですね。準拠法や管轄権のお花畑説明で済めばビジネスは楽です。
実際に相手方企業の実態や資産や評判などを把握できなくては、リーガルイシュー程度でも、投下資本(リーガルコスト)を回収できるか(勝訴率は?勝訴判決が画餅に帰すか?相手国の強制執行で費用倒れにならないか?)という事前リサーチが必要不可欠です。
それに即答ないしリポートペーパー添付で回答してくれる「渉外弁護士」が必要不可欠なんです。
日本に裁判管轄権があれば渉外弁護士はいらないなんて、産まれて初めて耳にしましたし、知人の渉外弁護士は苦笑して横を向きました。
それはそうと、既出の事例だと小倉先生ならいかほどで引き受けてくれるのですか?
Rédigé par : 憑依 | lundi 17 avril 2006 à 01:44
海外まで強制執行に行くのは大変ですが、日本向けのサービスをしているところは何らかの形で日本国内の個人や法人と債権債務関係を有していたり資産を保有していたりするので、よほどアングラなサービス以外は結構手がかりがあるものです。
Rédigé par : Hideo_Ogura | lundi 17 avril 2006 à 01:37
民事と刑事は分けて考えた方がよいと思いますよ>中井さん。
Rédigé par : Hideo_Ogura | lundi 17 avril 2006 à 01:32
サスケットさん
>疑問なんですが、海外のサイトに対して不法行為成立まで持っていくのって結構難しくないですか?
多分先生は、これみたいなのを想定してるんじゃないでしょうか?
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20001218205.html
尤もこの記事では
> 「ドイツ最高裁は、事実上世界中を裁きたいようだ。これが何を意味するのか、誰もわからない。ただ、ひとつはっきり言えるのは、おそらくたいして内容を理解していない裁判官による判決だった可能性が高い、ということだ」
> 「最高裁の判決は、これまで下されたインターネット関連の判決の中でも最悪のものだ。もし諸外国がこれをある種の方向付けとしてとらえ、自国で活動する他国の市民に対しても法を適用しはじめたら、世界規模での自由な情報の流れは、現実世界において不自由な状況へと一気に突き進む恐れがある」
このように問題点はいろいろ出ています
日本に当てはめた場合には、確認できる事実とそこから予測できる事を書けない。
その事は「表現の自由」及び「知る権利」を制限されるって事でしょうから、他国から抗議されようと突っぱねるしか選択肢は存在しません。
抗議を認めたら内政干渉を認めることになり、国としての独立性を疑われますから
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20001219207.html
> 「しかし、米国およびカナダの場合、われわれと歩調を合わせて法律を改正する可能性は非常に低いと思う。両国における言論の自由という概念は、両国の歴史と結びついている。一方で、人種差別の煽動を禁止するわが国の法律もまた、わが国の歴史と結びついているのだ」
この辺が最重要ポイントでしょうかね?
犯罪に関する協定でもお互いに納得できる部分でしか協定を結んでいないので、自国で犯罪で無い場合は相手国で犯罪であったとしても自国の法以外では裁かれる事は無いってことで
Rédigé par : sakimi | dimanche 16 avril 2006 à 23:44
>小倉さん
>損害発生地ごとに複数の不法行為が成立し
いや。
疑問なんですが、海外のサイトに対して不法行為成立まで持っていくのって結構難しくないですか?
私の友人のCG描きがパクられて憤慨してましたけど、海外なので文句も言えずに泣き寝入りという。
そもそも海外プロクシ使って国内に書き込まれたらどうにもしがたい問題を解決しようと思って、一生懸命共通ID考えたのではないですか。
とゆか、もしよろしければ、文句のつけ方でもわかれば教えていただきたいところ(笑)
どうにも中国語は難しうて。
ましてや誹謗中傷だか単に不愉快だ格別かつかない場合をや。
>憑依さん
ああ、それは要約すると、
【日本MMOのとった対策(ノーティス・アンド・テイクダウン方式)に個人情報が必要だという判決であり、ファイルローグのサービスに必ずしも個人情報登録が必須とは言われてはいないのではないか?
別の対策で違法ファイル流通を阻害できればそれでよいのでは?
故に直接匿名が否定された資料にはならないと考える。】
ということですね。
古い資料をよくもまあ(笑)<人のことは言えないけれど
Rédigé par : サスケット | dimanche 16 avril 2006 à 22:50
・・・読んでて不安になってしまい、ひとつ質問があるのですが・・・
もし中国でインターネット国家安全法のような国内法ができて「中国を誹謗するような文章が書いてあるブログを保有するプロバイダーを処罰する」という立法が仮にされたとすると、数多ある日本のほぼ全プロバイダーは、その中国法の適用を受けて有罪になってしまう!とそういうことなのでしょうか?
その際、日本のプロバイダーは処罰を恐れて国家を誹謗しないよう、表現規制をかけるべきなのでしょうか?
Rédigé par : bold | dimanche 16 avril 2006 à 22:44
ところで、こちらのファイルローグ事件に対する小倉評釈の疑問点に対する小倉先生のご見解は如何に?
http://plaza.rakuten.co.jp/ookitatemivic/diary/200503090000/
http://plaza.rakuten.co.jp/ookitatemivic/diary/200503090001/
小倉評釈への疑問や批判に対する釈明をいただけると議論が進展して助かるわ。
Rédigé par : 憑依 | dimanche 16 avril 2006 à 16:55
>それにしても、渉外弁護士さんで10分4500円なんてずいぶん安いところをご存じなのですね(それじゃ、純粋な国内弁護士の標準とあまり変わらないですね。)。まあ、タイムチャージ制をとっている弁護士は普通別途成功報酬など取らないと思いますけど。
そりゃ安いでしょ。大学同期の悪友割引50%(笑)なんですから。「私の周囲」という狭い世界では、タイムチャージ制+低率成功報酬制ってけっこうありますよ(ご存知ないですか)。
して小倉先生に依頼したら、前例の事案で、いかほどの訴訟コスト(報酬&経費)を請求されますか?
Rédigé par : 憑依 | dimanche 16 avril 2006 à 16:26
匿名サービスの提供者と共同不法行為責任との関係についてはファイルローグ事件判決の他、http://d.hatena.ne.jp/OguraHideo/20060410/p1 も参考にしてくださいね。
Rédigé par : Hideo_Ogura | dimanche 16 avril 2006 à 10:12
通説的な見解だと日本にも裁判管轄があるので渉外弁護士に頼む必要はないと思いますが(訴状を送達する際には翻訳をつけますが、一旦裁判が始まってしまえば、日本の裁判では日本語が用いられていることになっているので、こちらから翻訳をつけてあげる必要はありません。で、外国企業を日本で訴えるときは訴状には必要最小限のことしか書きませんから、訴状の翻訳を外部に委託してもそれほど大きな金額にはなりません。)。
それにしても、渉外弁護士さんで10分4500円なんてずいぶん安いところをご存じなのですね(それじゃ、純粋な国内弁護士の標準とあまり変わらないですね。)。まあ、タイムチャージ制をとっている弁護士は普通別途成功報酬など取らないと思いますけど。
Rédigé par : Hideo_Ogura | dimanche 16 avril 2006 à 10:09
> それ以外の要素を見ていくと、
で
> したがって、
> だけでは
もないでしょう。。。
Rédigé par : irose | dimanche 16 avril 2006 à 08:51
> したがって、拠点が海外にあるからというだけでは
こう言わなきゃいけない時点でかなり使えない一般論になっちゃってますね。このエントリ。
例えばtypepad.comは「拠点が海外にある」というだけのサービスでしょうか?
というか、そうですね、小倉さん。
実際に小倉式共通IDが施行されたとして、ここtypepad.comに問題となるブログがありそれを訴えるときに具体的にどのような流れになって、いくらぐらいお金がかかるものなのか、シミュレートしたエントリをあげてみてはいかが?
それによって小倉さんの話にどれだけ現実的な説得力があるかわかりやすくなると思いますよ。
とにかく小倉さんの話に欠けてるのは具体的な例示なんですよ。微妙にかみ合ってないような一般論が多くて。
Rédigé par : U-me | dimanche 16 avril 2006 à 08:10
私には十分な国際私法の知識がないので、正面から見解の当否を論ずることはできません。余計なことですが、いくつかの問題提起を・・・
①利用者の氏名住所を把握しないブログ事業者が当然に不法行為責任を負うかについては、http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041103#1099487546より始まる落合弁護士との一連の議論を参照下さい。
②現行法の解説(http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/pdf/020524_1_a.pdf)38Pは、3条1項の適用について、「不法行為責任の成立を同項所定の場合に制限するものである」ことを前提にしています。
この点、小倉先生の改正案3条1項が実質的にはプロバイダの責任を加重する趣旨であればどうでしょうか。
③発信者情報開示に関する訴えについては、現行法解説41Pによれば、法令第11条により日本法の適用があるときには適用されるとあります。ただ、「基本的には、被告の住所地国にしか国際裁判管轄は認められないと考えられる」とあります。
Rédigé par : 佐藤 | dimanche 16 avril 2006 à 08:09
たとえ日本の裁判所で小倉改正法という日本法に準拠しても、たとえばtypepad.comの利用者で氏名不詳住所不明の自称日本人を名誉毀損で訴えて被害額50~100万円相当の損害賠償を請求した場合、訴訟コストはどれくらいになるのかしら?
私の知っている国際訴訟の専門家である渉外弁護士は、タイムチャージが10分間4500円なんだけど……。1時間相談しただけで2万7000円、証人尋問3時間やっただけで約7万円、成功報酬が20%として10~20万円……これに交通費や文書作成料などなどが加算。
小倉改正法を念頭に、収入と支出のバランスを考えて、ご利用は計画的にしたら、元がたいしてとれないんじゃないかしら。
Rédigé par : 憑依 | dimanche 16 avril 2006 à 02:45