刑事訴訟において伝聞法則を原則的に採用できるのは、供述者を証人として出頭させることが原則可能であるという刑事裁判の特性が前提としてあるからです(そんなに昔の話をすることは基本的にないですし、その気になれば嫌がる証人を勾引することも可能ですから。)。逆にいうと、供述者を証人として出頭させることが原則不可能である場面で伝聞法則を採用してしまうと、証拠として採用できる資料が非常に限定されてしまい、却って客観的な真実とはかけ離れた事実認定を余儀なくされてしまう虞が生じてしまいます。だから、真っ当な歴史学者で、歴史的な事実を探求するにあたって伝聞法則を採用しようという方はいないのです(だって、「死人に口なし」という言葉があるとおり、もうお亡くなりになっている方を反対尋問するなんて不可能ですから。「もうお亡くなりになった人が遺した文書なんて歴史的事実の認定に使用すること罷り成らんなんていわれたら、折角土の中から木管を見つけて解読しても何の意味もなくなってしまいます。)。
まあ、歴史的な事実を探求するにあたって伝聞法則を採用しようなんていうのはマイナーな意見なので放って置けばいいといえばいいのですが、実は困りものなのは、弁護側が提出する供述調書を不同意としておきながら、弁護側が当該供述者を証人申請して「どうぞ反対尋問して検証してください」とやっても、「証人は不要」といってくる検察官と、これに同調する裁判官の存在です。ここでは、伝聞法則が、被告人を有罪とするのに都合の悪い事実または証言を隠蔽するため、つまり、客観的真実に近づくことを回避するために用いられてしまっています。弁護側提出の供述証拠については、検察側は供述者を反対尋問する権利は引き続き持つが、供述者についての弁護側の証人申請が採用されなかった場合には、検察側がその供述者に関する供述証拠を不同意とすることはできないというふうに、刑事訴訟法を変えてくれないかなあと思うことはしばしばあります。
>伝聞法則が真実を遠ざける場合
それはズバリ、実地調査未了のまま wikipedia 等の「無料でお手軽に手に入る肩書きや保証のない匿名の筆による伝聞証拠」をそのまま引用してアレコレ言って、その結果、信用性を減殺・滅却する場合です。
もしそうでないとしたら、IT技術知識や憲法判例知識に関して憶測や調査不十分で書くことはなかったでしょう。
肩書きや専門技量による専門知識(文献や論文)を重視する小倉弁護士先生の御言葉とは思えないです。逆に言えば「この肩書きにしてこの程度か」といわれる危険性が低いとは言えないとは言えないのかも知れないと思って困ってしまうのですが、肩書き信仰は悪魔の誘いです。
Rédigé par : 匿名法律屋 | vendredi 14 juillet 2006 à 09:33
小倉先生>
このブログでは先生だけが法律家じゃなくて他の弁護士さんや裁判官さんも見ておられるようです。先生が名だたる検察嫌いなのは僕は知ってますが、あまり極論や「無茶な意見」は法学でも書かない方がいいと思います。
Rédigé par : 小倉(コクラ)秀夫です | mercredi 12 juillet 2006 à 11:23
>供述者についての弁護側の証人申請が採用されなかった場合には、検察側がその供述者に関する供述証拠を不同意とすることはできないというふうに、刑事訴訟法を変えてくれないかなあ
貴方は弁護士として刑事訴訟法の伝聞法則をどのように理解しているのですか。
そもそも弁護士人申請の証人を裁判所(裁判官)が却下することは,情状証人を含めて滅多にありません。実際,私は20年近い法廷で却下された例は2例しか見ていません。
それは,証拠として事件との自然的関連性や科学的関連性(ときには法的関連性)がない無関係なものだったり,被告人の利益擁護には無意味無駄な証人申請とか,判決を引き伸ばすためだけの証人申請というものがほとんどです。
貴方の証人申請が却下されたのも,この類ではないですか。
普段から検察官請求証拠に不同意を濫発して検察官や裁判官に嫌がらせをする弁護人に多い傾向です。自分の意見が通らないというだけで刑事訴訟法を改正しろとか,伝聞法則の根幹を変更しろという駄々っ子みたいな無茶な意見は。
Rédigé par : 匿名法律屋 | mercredi 12 juillet 2006 à 11:00