参議院総務委員会での柏村武昭議員(自民党)の質疑が一部で話題となっています。
例えば、
ある有名なソプラノ歌手が君が代を独唱いたしました。そのとき、民間放送の各局は、翻々と翻る日の丸、あるいは一生懸命観客席で歌っている皆さんの顔、青空、そういったものを映しておりました。NHKはその君が代をバックに何を映していたかというと、何と馬のしりを映しておりました。これは私はびっくりしまして、すぐに決算委員会で質問をしました。そうすると、皆さんの答えは、帰って検討してお答えをいたします。次の日にいらっしゃいました。あれはたまたまそういう絵を撮っておりまして意図的なものではありません、委員の指摘は大変遺憾であります。遺憾なのは私であります。やっぱりこれは、ソプラノ歌手が堂々と君が代を歌っているんであれば、やっぱりどういう顔をして皆さんが一緒に観客席で歌っているか、日の丸が青空に翻る絵がどんなに美しいか、そういったことをやっぱり気にしなきゃいけないんじゃないですか。
それで、私は次の年の日本ダービーも見ていました。何とこそくなことに、この開会式の、次の年は、君が代の斉唱を外して映しておりました。それをBGMに馬の調子はどうか、そういったことばかりやっておりました。どういう根性なのか、私はあきれ返りましたけれども。
と柏村議員は憤慨されているようです。
しかし、日本ダービーの生中継をTVで視聴している人の多くは、ソプラノ歌手が堂々と君が代を歌っている場合の観客席で君が代を歌っている観客の顔つきや、青空に翻る日の丸の絵よりも、これから走らんとする出走馬の状態や最近の調子などの情報により高い価値をおいているのであり、NHKが視聴者がより欲する情報を優先的に放送するのは当然ではないかと考えてしまいます。と考えるのが通常ではないかと私などは考えてしまいます。「民間放送の各局は」といわれてもG1レースを生中継するのは、東京でいうと、NHKとフジテレビくらいなので、きっとフジテレビ系列1社のことをいっているのではないかと思うのですが、フジテレビ系列の競馬中継ってゲストによる君が代の斉唱のときにそのゲストが「堂々と君が代を歌っているんであれば、やっぱりどういう顔をして皆さんが一緒に観客席で歌っているか、日の丸が青空に翻る絵がどんなに美しいか、そういったことをやっぱり気にし」て中継しているかっていうとそういう印象ってあまりないです。「愛国者」の方々って競馬中継を見る際に、出走馬の状態とか調子とかではなくて、そういうところに着目してTVを見ているのでしょうか。
柏村議員は、花岡さんのブログのコメント欄を炎上させた方々と同じようなこともいっています。
ついこの前まで日本じゅうが熱狂したトリノ・オリンピックを覚えていらっしゃると思うんですが、荒川静香選手の演技には感動いたしました。見事な金メダルを取ったわけでありますが、荒川選手が金メダルを取ったときに、彼女は感激の余り日章旗を体に巻き付けてリンクの中をウイニングランをしたわけですね。そのときにNHKの見ていた人は、あれっ、突然VTRに切り替わったというふうなことで、恐らく抗議がたくさん来たと思うんですね。
私はこれは意図的にやられたのかなと思っていろいろ調べてみたら、これは後で聞くと、どうせ説明されるから言いますけれども、国際放送に任しているんでスイッチングがそうなった、だから仕方がなかったんだと。民放は堂々と生で流しているわけですから、これはもう非常に対比がはっきりと出たわけですね。じゃ、VTRが流れたんなら、その後、ラジオみたいに、今リンク上では荒川選手が感動の余りウイニングランを日章旗を持ってやりましたという実況放送をしたってよかったんです。そういうこともしないで、これは国際放送に任していますからという。そのときに私は、これが初めてであれば、ああ、そうなのかと思ったんでしょうが、またやったかというふうな気持ちがあったんですね。
私はこのとき生中継を見ていなかったので、柏村議員が「今リンク上では荒川選手が感動の余りウイニングランを日章旗を持ってやりましたという実況放送をしたってよかった」と考えた時間帯にそのような実況放送をせずにどんな実況放送をしていたのかを知らないのですが、国際映像によって選手の演技のハイライトが映し出されているのであれば、その映像に関するコメントをアナウンサーないし解説者がつけるというのは自然な行動であり、多くの視聴者の期待にも応えるものなのではないかと思うのです。
別に、個人の趣味嗜好として「日の丸・君が代フェチ」がいたって構わないと思うのですが、日の丸や君が代が他の日本国民に如何に尊重されているのかということを知ることを何よりの楽しみにしている人というのは一般的には珍しい人の部類に属するのですから、NHKがその種の情報にプライオリティを置かなかったというのは「皆様のNHK」としては当然のことであって、そういう事実を列挙して「NHKの国歌・国旗に対する考え方」を示したような気になってもらっても困るなあというのは正直なところです。いや、ネット右翼さんたちなら「ああ、また、しょうがない人たちだなあ」と思うだけでよいのでしょうが、柏村さんの場合、れっきとした参議院議員なのですから。
まあ、現役の国会議員が、国旗国歌法を読んだ上で「やっぱり、国歌・国旗はもう法律までなっているわけですからね。法律までなってて、国の誇りですよ、旗も歌も。そうすると、やっぱりそれを助長するような責務があるんじゃないんでしょうかね」なんて言ってしまうあたりが世も末状態ではないかとは思うのですが(「国旗及び国歌に関する法律」は、国旗や国歌を「国の誇り」とすべきかについては何らの定めも置いていないし、NHKに対して「国旗や国歌を「国の誇り」とする」ような風潮を助長する責任を負わせる旨の規定も置いていないことは明らかだと思うのですが。)。